教授挨拶
山本 陽一朗
東北大学大学院医学系研究科 人工知能医科学分野 教授
理化学研究所 革新知能統合研究センター チームディレクター(兼任)
医学の現場では、生体の設計図であるゲノム、そのシングルセルレベルでの空間的配置を捉える空間オミクス、組織や臓器の形態を反映する医療画像、診療過程や転帰を含む臨床情報といった、次元も性質も異なるデータが日々蓄積されています。しかし、それらを潜在空間のレベルで横断的に統合し、疾患の理解や治療の意思決定へと結びつける体系は、いまだ十分に確立されていません。本分野では、こうした多次元医療データに対して、AI・数理・医科学を横断する解析を通じて、新たな知の創出とその医療応用を目指しています。
研究は、仙台の星陵キャンパス(東北大学大学院医学系研究科 人工知能医科学分野)と、東京の理化学研究所(理研連携大学院 数理知能医学講座)の二拠点体制で推進しています。大学における医学・臨床研究と、理化学研究所における先端的な人工知能・数理研究を往還させることで、医療課題を出発点としながら、より普遍性の高いAIの理論や方法論へと展開する研究環境を構築しています。
本研究室が重視しているのは、単なる高精度予測としてのAIではありません。限られたデータや不完全な観測条件のもとにおいても、医学的知識と整合し、科学の進化そのものを加速させるAI、すなわち新しい「AI for Science」のあり方を探究しています。疾患メカニズムの解明、新規治療法の発見、患者さん一人ひとりに適した治療選択の支援に加え、医療分野におけるAIの考え方や枠組みそのものを更新する、新たなコンセプトの構築を目標としています。
医学、情報科学、数理科学といった異なる専門性を、それぞれの立場に留めるのではなく、一段高い抽象度で結び直すことも本分野の重要な使命です。共通の問いのもとに人が集い、分野の境界を越えて議論し、挑戦できる場を形成することで、本研究室が次世代の医療と知の創造を担う拠点となることを目指し、教育・研究の両面から取り組んでまいります。